棘/為平 澪
 
と恋人だと認めてある

   チクチクと中指の痛みが 疼きに変わり 
   棘は血流に 飲み込まれていく

詩集に絡まっていた棘が 
女の見えない部分をゆっくり流れていく
それはいつしか巨大な肉腫に腫れ上がる

医者はその時 手遅れだと宣告し
母の後を追うようにと 毒入りの
真っ赤な坩堝を手渡すだろう

             ※

詩集を本棚から探していると 中指に小さな棘が刺さった

棘は私を決して赦さない
それでいい それでもいい

私は何かに謝りたかったのだ
絡まり続けた糸が いつか解けるように、と
夢を見ながら 今夜 血の池に沈む

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