窓/宮内緑
 
この冬を無事に乗り越えたなら、つぎはさえずりの季節だ
そんな希望だけをたよりに残り火をまもっていると
からからからと小さな音がして、人の子がそろりと頭を出す
子はくるくると首を回してこちらを見つける
こちらは凝視められ、ばつがわるそうに身動ぎすると
子はそっと首を引っ込めた からから窓も閉じ忘れて
風はすさび雪は舞い、洩れる灯はきらきらと結晶に宿った
窓は夕餉の匂いが消える頃まであいていた


                      (2014年冬)
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