幽霊と虎/片野晃司
炎を搾り出して、それからぼくの胸を内側から引き裂いて虎があらわれて、ぼくのぬけがらを飲み込んで、きみの白い壁の部屋でぐるりと回って、それから虎はきみを組みしだいて引き裂いて、きみの部屋を引き裂いて、きみの大切なすべてをめちゃくちゃにしてしまって、それから虎は檻の中できみを思い出している。
虎は檻を抜けて、あの部屋をぐるりと回ってからカーテンを少し揺らして窓を抜けて、団地を越えて線路を越えて風のように駆けていって、丘を越えて川を越えて、それから空は夏雲湧き立ち、あの白い壁の部屋には檻があって、その中でぼくはいつまでも待っている。
Hotel第二章 第四一号 二〇一七年九月
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