時間外/ただのみきや
のものが意味を放棄した世界で
一瞬飛んだ記憶の中にあったであろう調和こそ
後から幸福だったと思わせる幽霊の軌跡のよう
すなわち偶然と錯覚と感情の
はだけた人間性の
剥がれ落ちたメッキの
哀しい微笑みの偶像であり
ぶるぶる震える腸をぶれない言葉に置き換えようと
葛藤している理性を誘拐した
アダムスキー型UFOの大広間で
テキーラを注いでくれた白い
水着の似合う女の子の右目に映り込む
いま起ころうとする事件の犯人として
糸を切るわたしも
ひどく冷たい朝に詩を書いていたのだ
かつては一人の人として
九才の頃昼寝をしていると
壁掛け時計が顔の上に落ちて来た
地震があった訳でもなくただ
時間に鼻っ柱を殴られたあの日から
繰り返し訪れる時の白波の切っ先が
血まみれにした
不条理な笑いの堆積を
脳天から真っ二つに引き裂いて
湯気を上げながら遠ざかって往く
連結された言葉たち
《時間外:2017年12月23日》
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