少女と森/あおい満月
森は深く続いていた。森にはすべての闇がある。闇が森のすべてなのか。植物で覆われているせいで、緑は闇と化すのだろうか。森のなかで声を出す。私の声は喉から腕になって森を掻き出していき、森を食べていく。森には味がない。口に入った草木は灰になっていき、チョークの粉が肺に入ったように私は咳き込む。まだ夜明け前だった。太陽が手のひらに昇ってくると、食い荒らした森の地面にことばが見えてくる。けれど、ことばであって、ことばではないことばだ。私には記憶がない。ことばを吐いた記憶がないのだ。しかし、どれも私のことばである。
*
森のなかで誰かの呼ぶ声を感じた。
振り返ると一人の少女がいた。
「あなたは
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