爪/次代作吾
 
の爪をじっと
見つめたらいい
おそろしいものである
父も母もいるだろう
知らない血も混ざっている
そんなものを先っぽにくっつけて
食べたり飲んだり
電車のったり
人を傷つけたり
傷つけられたり
自分を傷つけたりして
一喜一憂している
幸あれ
爪と肉の間に世間がつまっている
吐き方を知らない苦痛
灰皿で焼ける爪から
立ち上るのは臭いだけではない
空間を侵食し
それはそのまま人間にも侵食する
感覚器官
目はだまされる
耳もだまされる
鼻よ
なぜおまえは2つ空いているのだ
普通とは言いかねる
普通とは言いかねるぞ
この瞬間も爪は伸びている
なんという
[次のページ]
戻る   Point(2)