【批評ギルド】原口昇平「とりあう手」について/田代深子
物語はない、〈他〉こそが物語の素材ではなかったか。物語は〈他〉という綻びを、生まれながらに内包している。そしてその内なる綻びから風化はすすみ、物語だったものもやがてはらはらと、再び崩れこぼれおちるだろう。ひろっても、ひろっても。
繰り返し、性懲りもなく、おもちゃを玩ぶ無心で、われわれは物語を語っている。書くということは、その無心な絶望を刻み記してしまうことなのだ。自らに絶望を知らしめよ。そしてその先に生まれてくるものは、物語なのか、そうでないものなのか。
2005.3.12
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