夏のあとさき/そらの珊瑚
園の蝉たちの
鳴く声のけたたましさ
真夏に想う氷
ひとかけの氷が
ほどけて水にかえってゆく
人生において一瞬の点のような時間
何の役にも立たないひとかけらの時間
犬は氷が怖いらしく
ただ遠巻きに見ている
臆病だね、
蝉の抜け殻は目ざとく見つけて食べるくせに
北極の氷がみんな溶けて海にかえっていったら
北極熊はどうしたらいいのだろう
ただの熊に戻れるのだろうか
それはちょっと困るわ
アザラシと間違えられて
あたしは喰われてしまうじゃないの、と
いいたげな犬は
なるほど少しばかりアザラシに似ている
満月の夜
一匹狼は遠吠えをしないなんて嘘だ
誰とも分かちあえなくても
さみしさを
月にだけ打ち明ける夜がある
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