タモトユリ/藤鈴呼
 


白い刻みの中で震える存在
颯爽と走る湿気の中に巣食う種は
一粒ずつ 欠片となって降り注ぐ 雨のよう

時に雹となり 我等を脅かすけれど 心配ないよと
優しく広がる両手の如く 柔らかな花弁が 
胸に痛むのは何故

言い聞かせても 馨しさには叶わない
願いを込めようとして 
何を祈るべきか 忘れてしまう夜のように

静かに 美しさを称えようとも 
共に見る相手がいないのは
とても寂しいのだ

目の前で揺れる花びらが 何時からか高貴に満ちて
楽しげな歌声は 何時からか疑惑に墜ちて

不協和音だと信じたくない位に
耳障りではない音列だったから 気付かなかった
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