暖炉/藤鈴呼
 


戯れの猫が二匹
首を伸ばして寄り添っている
コンロの上 いや違う
それじゃあ 食べられてしまうでしょう?と
お小言言いながらも 唇は歪めて笑う

勿論 口角は揚げる方向が一番だから
カラリと揚がった天婦羅が 今夜の口上

誰にも邪魔させないの、とは言いながら
この お抹茶色したお塩ってば
見かけ以上に確りとした味わいだから
ちょっとねえ 舐めてみて? なんて 話し掛けている

それでも二匹は寄り添ったまま

土台 無理な話なんだ
足元を括りつけられているから
例え 目の前で焼かれているのが 魚であろうとも
ヨダレを流すばかりで 喰らぬ事など 到底 不可
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