曇る鏡/田中修子
 
人は反射する鏡なのです

だれかをよわいと思うとき
わたしがよわいのです

だから感じることをやめなければならない
わけではない
人はほんとうには
神器そのままではありえないから

永遠に反射しあい
遠ざかるだけではない

肉と魂によって
あたたかく
抱きしめあえるでしょう

奥底の鏡であるところが
するどく散らばっており
ひとつひとつ
みががれているほどに
人のよわいと、にくいと、みにくいと
あまりにも感じるのは
それは、わたしなのかもしれない

奥底のいたい破片を
ずっととなりにいてくれて古びたにおいのする
ぬいぐるみのように
だきしめつづけ
ようよう
ぬくもりの投射
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