小詩  二篇/為平 澪
 





「楽園」


その声が聞こえない
伸びることしか知らない真っ新な声が
コインロッカーの箱にしまわれていく
はじめから何もなかったように
もう、その声は聞こえない

ここは楽園
花畑で荒地を隠した楽園
世界で一つだけの花を皆で歌いながら
誰もが同じ背丈であることに安堵した

その声が聞こえない
生れ落ちたばかりの闘志
振り上げたままの何かを掴んだ拳
肯定せよ、肯定せよ、泣き喚く第一声、

原始の衝動で夜を叩く声を
赤い舌たちが「私生児だ」と切り刻み
灰色の花園に誘い込んでは埋葬していく
その声は、夜、荒野の中で干からびた
         
        ※

「ここは楽園、こんなふうに楽園!」
大歓声に誰かが大きな拍手を贈る

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