見渡せば/藤鈴呼
踏切の向こう側
校庭を囲むように
桜並木が微笑っている
少し進めば
市役所と神社へ向かう道にも
見え隠れしている
活きてはいるけれど
動かぬ枝たちは
見えたり隠れたりする
術を知らない
代わりに
花びらたちが
これでもかと言う程の
シャワーを演出してくれている
未だ 蕾ばかりで
花びらのマクロ撮影には
成功していない
近付かないから猶更
機会など 訪れない
あなたと一緒に観ようと決めた桜だから
わたし 独りきりでは
楽しめないのと 独り言
呟いた刹那
デキャンタの中で
幾つもの茶葉が
ふよふよと踊る
少し 塩っ辛
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