ロールケーキの里/藤鈴呼
のどかな季節の始まり
桃色の花びらが舞う合図
風と時めきが苛立つ庭には
慰めが必要
まぶされた砂糖は かつて真白だった
黄砂の季節だけに 少し黄ばみ始めた
それが汚いと連想するな
少しの期待を 決して忘れるな
蹴り上げたいサッカーボールは胃袋に収めた
白いごはんに ゆかりを乗せて
互い違いの海苔を貼り付けたら ラブボール
世界一の口づけを交わす
あちら側と こちら側から ぱくり
朗らかな陽気に包まれ
体温ごと上昇し始めた
店員だって気が滅入る
客の存在に気付かずに 揚げ物トレイの出し入れを
繰り返す
誰が食べるんだ こんな脂っぽい存在
咀嚼する
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