5年ライオン/藤鈴呼
 

浮かんだのは たてがみ色の雲
何処に と 聞かれれば 迷う事なく空と応える
けれど 否 ここは海 そういう表現だってあると
教えてくれた 一房のたてがみ色をした髪を持つ少女

一年目は全てが柔和だった
ミルク色に包まれて胃痛に悩まされる事なく
何なら胃袋を掴まれて嬉しいと悲鳴を上げたくらいだ
乳白色の世界に佇む 恍惚とした表情も
浮かべたことだろう

根っこのような絡まり具合で
時に噛み合うこともあった
甘噛みだから怪我はしないだろうと信じていたが
案外と強力な刃となった犬歯
犬と名が付く位だからとバカにしていたのがいけなかった

外側はミルク
母親の体温が
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