カーネーション/銀馬車でこい
母の日に初めて
カーネーションを買いに行く少女は
黄色い喜びを
こっそり抱えている
途中でなくなってしまうことの
ないように
自分の貯金箱を
壊してしまったことは
誰にも言わないで
隣町のバス停の
真ん前に花屋さんがある
バスもいれると
15分かかるけれど
黙って家を出て
隣町まで行ってしまうことが
誰かに知られてしまう
かもしれない
だから 誰なのかわからないように
お母さんの大きな麦藁帽子を
すっぽりとかぶっている
バス停まで走っていく
バスの中で
カーネーションという花の名前と
隣町の名前を
忘れないように
うつむきながら呟いている
隣町のバス停に着くと
花屋さんまでまた走っていく
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