日々/飯沼ふるい
あっても
見えない文字で埋め尽くされた
空白の過去が
さきへ進まんとする足を掴んで離さなかった
好いている人の体を
いつまでも抱きしめていたいという
あの愛情も
いっそ射精のように
苦海の芥として消えればいいのに
どうしても肉体を超越しえない
ぼくのなかだけの処女が消えた
いつかあの日
流星群が夜を眩しく傷つけた
いつかあの日
顔を拭う
みぎの頬をなでまわす
これを書き倦ねているあいだに
季節は晩夏から
秋をまたぎ
年を越し
根雪の溶けない冬をやり過ごし
なまあたたかい春を迎えてしまった
半年以上も湯船に浸かっていたのだ
いい加減風呂からあがり
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