人と犬は枝と花/田中修子
 
冬のあいだは閉じていた即売所に
春の野菜が並ぶのをみにいった

空に白い梅の花が
燃え上がるように咲いている

ハンチング帽をかぶった老人が杖をつきながら
老犬とゆったりと歩いていた

犬は
毛がところどころはげていて
右足には
はみ出た綿みたいなのがみえ
歩きづらそうにしながら
よって来てくれた

かがんでなでた
白にうつりかわった目が
とてもまっすぐにわたしをみた
枯れ枝のような尻尾が
したしげに揺れていたな

充ちている
一人と一匹だな

ありがとうございます
こちらこそありがとうございます

挨拶をして別れる

さっき枝にとまっていた花が
まばたきすると
しずかに散って
地に淡く滲んでた
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