浅瀬のクジラ/青の群れ
 

もっとも、この百年くらいの話だけれども

大海原を知っているあなたの友人たちは
きっとあなたの死を知らないね
見えない海の底の屍を越えて泳いでいる、まだ生きている命

洗濯機のようにぐるぐるとかき混ぜられて
漂白された白衣の皺を伸ばすように

灯台も太陽も、海の底どころか人間の中身すら照らせない
飼いならされた信仰だって何も映さないのだから
柔軟剤の匂いが死臭をかき消すことはない

水面に映る光をみて、反射する光は綺麗だね
あなたとわたしには見えないプランクトンを見ている

砂まみれの駅の改札から、真夏と海水浴客が遠く去った
浅瀬で揺れて、そっと手招いている海月はどこにだっているけれど
腹に縫い付けた糸を解いて
なんとかまだ今日を生きてるみたいだ
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