再生の日/ヒヤシンス
窓から覗いた二つの目が遠く潤んでいる。
心は情景に溶け込み白茶けた街はとても静かだ。
まるで初めて見るかのようなその街の光景はどこか異国の匂いがする。
灰皿の上では吸いさしの煙草が紫の煙を吐いている。
いつかの少年はいつしか一人の男になった。
そして嘆いた、もう子供ではないのだ。
部屋の乱雑さだけが男の味方だった。
窓をかすめるように一本の木が立っている。
幹は立派だが分かれる枝はどこか心細かい。
散るのを忘れた枯葉が幾枚かその枝にへばりついている。
夏の盛りに一枚引き抜いた緑の葉を男は愛読書の栞にした。
今、テーブルの上に重ねたままのその本は
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