ケ・リ/本田憲嵩
 
硬く無機質な書類の文字列と女に
ぼくはいつも復讐する
三階の更衣室から
白く冷たい廊下をえて
いつも非常階段を下るハイヒールの響き
その規則ただしいリズム
それがミリタリーにぼくに木霊する
そして
今日もはじまる
総務課長ケ・リ女王の統括
かの女のハートはつねにバリケード
それに伴ってピンと冷たく張りつめる事務室内の空気
いつも
かの女が書類に示す文字列は
トガッた錐のような鋭利さと硬質さだ
僕には
無闇な平仮名さえも許され無い
(――だがしかし ふとしたひょうしにふれてしまった
 そのしっとりとしたてのやわらかさ
 そして とあるきゅうじつにぐうぜんにみかけてしまった
 かのじょのいがいなふぁっしょん
 みずいろのぶらうすに
 べーじゅのろんぐのすかーと)
ぼくは詩とひらがなでいつも復讐する
硬く無機質な書類の文字列と女に
(ほんとは あんたが すき だった、と)


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