『微笑む肖像』/ハァモニィベル
る。
金の為でなく、ただ その絵のために
その男は 奪い
二十五年間、
どんなに貧困なときも 肖像を手放さず、抱き続けたという
(モナリザが盗まれた頃と同じ、
1900年ごろの話である)
その名画泥棒が手に入れたのは、
当時、世界最高額の絵画だった
ゲーンズボロ 作
『デヴォンシャー公爵夫人ジョージアナ』 である。
実物は、英国一の美貌といわれ、
セクシーでもあり、スキャンダラスでもあった。
「待ってちょうだい、・・・十七のころは、誰もが振り返るほど
美しい公爵夫人だったのよ。それを覚えておいて」
そんな魅力的な彼女の死後、
一世紀を経て、オークシ
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