創作童話詩/水菜
 
周りは、潮の匂いで満ちている
潮騒が殻の周りを包み、一切の音を消す
微かに殻を破る音がする
殻の中から、仄白い女の手が伸びる
ふっくらとしたそれは、完璧な造作で石膏で作られた理想の女の手のよう
女の叫びが潮騒にかき消される
陰と陽が遊ぶ
苦しみから逃れたい一心で
幽鬼のような呪いを辺りに振りまきながら
女の叫びはまるで怒っているようにも泣いているようにも聞こえる
苦しみよりも悲しみが悲しみよりも苦しみが
よりいっそうの苦しみが
われ可愛さにわれ愛しさに
辺りに呪を振りまいて
呪うように遊ぶ
遊ぶ
潮騒に紛れて
 



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