死生観/水菜
巻き戻された時計のなかで、まるごとなくなるという感覚は、弁舌にし難いものがある
それは、在ったのだが、
同時に、無かったことでもあった
後悔もなにもない
ただ、間違いなく在ったのだが、それは無いものでもあった
そういう事実があるだけだ
今私は、生きているし、
この口に入れた命たちは、私よりもずっと能力が高く、私よりもずっと純粋で、私よりもずっと生きていて良い生き物たちに違いないのに、私は、沢山の命を奪って命を繋げている
という事実もそこにある
精神とは
意識とは
罪に怯える意識とは
目には見えないもので
間違いなくそこに在るのだが、無いものでもある
それは空を掴むようなもので
それは、空そのものだ
だから、私の死生観は、【空くう】だ
そう思う
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