死生観/水菜
 

巻き戻された時計のなかで、まるごとなくなるという感覚は、弁舌にし難いものがある

それは、在ったのだが、

同時に、無かったことでもあった

後悔もなにもない

ただ、間違いなく在ったのだが、それは無いものでもあった

そういう事実があるだけだ

今私は、生きているし、

この口に入れた命たちは、私よりもずっと能力が高く、私よりもずっと純粋で、私よりもずっと生きていて良い生き物たちに違いないのに、私は、沢山の命を奪って命を繋げている

という事実もそこにある

精神とは

意識とは

罪に怯える意識とは

目には見えないもので

間違いなくそこに在るのだが、無いものでもある

それは空を掴むようなもので

それは、空そのものだ

だから、私の死生観は、【空くう】だ

そう思う
戻る   Point(2)