人間の歌/梅昆布茶
 


人間はけっこう手間暇かけて生まれてくるものだ
赤子が生まれてくると人間関係は大きく変化する

たとえばあなたと僕がお母さんとお父さんに
父と母はおじいちゃんとおばあちゃんへと
ひとつの生命の誕生はそれだけのエネルギーを孕んでいる

親の庇護のもと育まれた生命のシステムは維持され
意味のある或いは意味のないあらゆるものに出会う

いくつもの岸辺をへて小舟をあやつるように
年月の満ち欠けの後にやがて翳りがおとずれるのだが
僕もそのように生まれ育まれ死んでゆくものの
ひとりにすぎない

宇宙の組成と同じものが僕のからだをつくっているが
こころの組成はわからぬままに齢をかさね
変化しつづけるものを捉えようともがいている隙に
いつの間にか日が暮れて星が瞬きだしているものだ

生きることが結論のない営みであるならば
あえてそれを求める必要はないのであろう

森のなかの小径をたどり
いまというたわわな果実を味わう
ただそれだけでも
生きてゆけそうに想えるのだから


















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