吉野(その二)/tonpekep
 
ロープウエイからしもせんぼんの桜が見えた。散ってしまった桜の木がほとんどであったが、中に満開の桜の木もあって、同乗しているおばちゃんの数人が歓声をあげた。声のトーンからして関東から来たおばちゃんだろう。関西にはない上品さが言葉の切れ端に感じさせるが、基本的には同類に属する。何かのしがらみからの開放感からか、到着するまでずっとしゃべり続けていた。

いつかきっとこのロープウエイは落ちるぞと確信をしながら、吉野山駅に下車。下りるとすぐに金峯山寺(きんぷせんじ)の総門である黒門が目に飛び込んでくる。石垣の側に構えるその黒塗りの門の屋根に覆い被さるように桜の木があって、門をくぐると木洩れ日と桜の花びら
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