吉野(その一)/tonpekep
 
しもせんぼん、なかせんぼん、かみせんぼん、おくせんぼん、有名なこの吉野の桜の名称は、吉野山の谷から尾根を埋める桜の全てをいう。
千本という名称から、合計で4千本かと思うかもしれないが、桁がひとつ違って、実はおよそ3万本ある。
開花ともなれば山は桜の波に打ち寄せられるかのように、谷から尾根へそして山頂へと花の白波が山を上っていく。山のさきには吉野の霞ぶる空が広がる。

役行者(えんのぎょうじゃ)から始まったひとつの信仰が吉野の山を桜の名所にした。
信仰の証として信者たちが桜の木を植樹したと云われ、桜の花ひとつひとつが修験者の祈りのようなものであるのかもしれない。

みよしのの山辺に咲け
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