幸運の天秤/りゅうさん
子を殺された親が怒り狂うのは当然だし
親を殺された子がテロリストになるのも
わからぬ話ではない
和解の筋道など見えない
こうして天秤の片方に
盛られた不幸は重く
もう片方にいったいどれだけの果報を
乗せれば世の平衡が保てるだろう
反目しあう憎しみと復讐は
最終的には虚しいということが
ロミオとジュリエットの、ハムレットの
教訓だったろうか
しかし復讐者の憑き物が落ちるのは
彼らの異議申し立てが真剣に聞かれ
断罪の叫びが反映された後なのだ
思うに
耳を傾けるくらいのことは
してみてもいいのではないか
相手の世界観を許容するのに
エネルギーはいるだろうから
私はその一助になりたい
途方もなく良い知らせはなくとも
それが誰にも訪れ得ることを土産に
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