夕べの祈り/
ミナト 螢
私が生まれたその日の朝に
カナリアが鳥籠から逃げて行き
音の消えたリビングルームには
黒いグランドピアノが置かれて
私の居場所は椅子の上になった
ソナチネが弾けるようになっても
指先だけでなぞる鍵盤の
偽物の響きが嫌いだった
心を込めて演奏する事
恩師が亡くなり半年経って
追悼会の最後を締めくくる
月光を天国まで届けると
誰かに聴いて欲しいと思う気持ちが
私の中で大きく膨らんで
心が奏でる音楽の羽根を
白と黒に塗り分けてゆきたい
戻る
編
削
Point
(4)