森の教会にて/ヒヤシンス
 
 不思議だ。
 見ず知らずの他人に絆を感じて、
 日々の苦しみが薄れてゆく。
 森は教会を包み、僕らは教会に包まれている。
 宗教を超越しているようなこの感覚。
 僕の魂は今この空間を浮遊している。
 浮遊する魂が静かに浄化されてゆく。
 そして清らかな魂は僕に戻る。
 そして僕は今日を生きる力を手に入れる。
 祈りを終えた夫婦がこの教会を後にする時、
 僕の方を向き、軽く微笑みかけた。
 僕も微笑み返した。決して重たくならないように。
 いつしか音楽はやんでいた。
 天使も神のもとに帰ったようだ。
 それならば、僕も家族のもとに帰ろう。
 教会を出ると森の木々は鮮やかで、
 僕を迎えてくれている。
 さっきまで気付かずにいた。
 美しい晩秋のこの土地に冬が迫っている。
 そして一つの物語は唐突に、とても唐突に終わるのだ。
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