校庭のふたり/葉月 祐
木がちょこんと
恥ずかしそうに立っていて
その小柄な木は
深紅に染まりきっていたのだ
まるでふたりが
誰にもとめられない
秘密の恋でも
しているかの様に
校庭の中で
そこだけが鮮やかだった
ふたりの性別を
私は知らないのだけれど
どちらが男で
どちらが女でも
どちらも同性だとしても
あの校庭で
ふたりだけが恋におちていて
おそらくその恋は
密かに実っているのだろう
色をひとつずつ無くし
過ぎていく季節の下で
深みを増した緑に囲まれた
大柄な黄金の木と
小柄な深紅の木
ふたりの幸せが
いつまでも続く様にと
願わずにはいられなかった
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