渡り鳥伝説 /白島真
っておこう
ほんとうに
「言葉なんておぼえるんじゃなかった」だよ*
私が
鳥になる
唆した蛇はもういない
諫めただろう親ももういない
関係を持ったのは
女より言葉の方が事件だった
私が鳥であると言うと
世界は真っ二つに分かれる
ここに在ることが
意味を持ち始めると
私は空を飛ぶさわやかな
渡り鳥になれない
ほんとうは
言葉を使わない詩人になりたかった
透明なくにから
透明なくにに渡ってみたかった
でもそれは無理だから
私は堕ちながら
空に逃げる
*田村隆一《帰途》より
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