すりおろしりんご/藤鈴呼
赤かった皮のことなんて
なかったような角度で
スリオロサレル
リンゴの身になって御覧なさい
決して実になってはイケマセン
まして見に行ってはいけませんよと言われると
覗き見したくなるのは 人の常でも有りますが
我慢なさいと おっかあが おっしゃったので
頷きたかったのだけれども 肺が痛くて 声が出ない
会話の途中で 遮るような 車窓から
手を振る子供達の 笑顔を見るにつけ
虚しくなるけれど 大丈夫
ここには 温かな液体が 存在するのですから
今すぐ 飲み干してしまおうと 独り言
杯を重ねる度に
肺の痛みなど
まるで なかったかの ようにな
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