鍵のかかる部屋/為平 澪
蝋燭の炎がゆっくりと立ち上がり揺れながら燃えていった
内側からも外側からも鍵は差し込まれ続けた
開かせてすべて暴くために指は鍵穴を回し続ける、
あ、の音。
クーラーの微風にも耐えていたレースカーテンの黒い秘密に
指が触れた
誰にも言ったことのないコトバを発し続けると
西日は視線を細めて一心に熱を浴びせた
黒かったものを白かったように言い訳して目を閉じる
私は開かれたままロックされた
成婚の痕が蝋燭の炎に炙り出される
鍵のかかる部屋に
雌雄の区別のつかない蛇の抜け殻二つ
燃え尽きて歪なだけの蝋燭の蝋
腐って苦い水になった林檎
夜の扉を開いて 私は月に鍵を差し込む
カーテンで空は遮られると
あなたの指が 今夜もまた
壊れた林檎のカタチをなぞる
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