水の簾/白島真
 
を探して消えていくだろう。より愛してくれない宿主を探して。

あ 郵便配達夫の話だったね。彼の故郷は勿論、宛名差出人不明の白い封筒のなかだ。
世界ではここ数百年、宛名不明、差出人不明の手紙が同じところをぐるぐる回っている。
それも何万、何億通とあるらしい。ぼくがあしたきみに書く手紙もきっと届かないだろう。
その配達夫がこころのこもった手紙はみんなどこかの惑星の黒い草原に埋めてしまうからだ。

きのうもあの人影のないさみしい埠頭から、愛の手紙が船便で大量に積み込まれたようだ。
そこにはあいつが勝手に書いた死者への手紙も混じっているに違いない。



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