ところにより/Seia
イルの隙間を鉛筆で塗り潰しながら
(ところにより)と口パクする
アナウンサーの顔と
不自然に明るいスタジオと
右上の時間表示と
ぷつりと消したテレビにうつる部屋と朝を
今更じわじわ
思い出している
とまらない想像のなかで
海はこれでもかと透明度を高めて
とろけはじめた色は
境界線を主張しているのに
やつれた実感の海は
消波ブロックがうごめいて
役目を終えたものたちが
最後に流れ着いていて
我にかえる
右折レーンに入りさえすれば
手の届く海を
わたしは選びたかった
(ところにより)
と声がする
降る
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