「蓮池にて」/イナエ
迦さまの思惑など知るよしも無い
地獄からの脱出も自分の力が頼りだ
風が吹けば切れてしまうような細い糸
(地獄に風は吹かないか)
親鸞が見たら言うだろう
「自力などで脱出できるものか 他力こそ本願だ」
地獄に落ちた人間に
六字の名号が浮かぶことなどあるまいが
カンダタが南無阿弥陀仏を唱え
糸にしがみついたままだったら
お釈迦様 どうなさる
即座に糸を切られるか
そのようなことは出来ませんよねえ
蜘蛛の糸を垂れた以上は
カンダタの後に続いた大勢の亡者たち
わたしもその中のひとりになる
それが人間というものさ
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