山荘にて/ヒヤシンス
 
を描く。

 夜。部屋にはモーツァルトの弦楽四重奏曲が流れている。
 誰かが言う。結局、あの驢馬は幸福だったろうか。
 別の者。それよりあの子さ、あの子の秘密は毛布にくるまれたままだ。
 私。答えなどないんだ。すべては感じるままさ。

 朝。光が希望を運んで来る朝。
 すべては夕景に始まり朝日によって完結する。
 人生は悲しみの連続だが喜びがそれを凌駕する時、
 それは一瞬間の天からの贈り物となる。

 絶頂の瞬間を我らはこの山深い山荘に見た。
 美に導かれ、同じ時を過ごした我らは魂の兄弟となる。
 人間の存在価値を我らは互いの中に再発見し、
 絆は深く、息遣いも朗らかだった。

 冬。山荘を後にする時、窓の隙間から幸せが吹いて来た。
 我らは明日への活力と愛とを手に入れた。
 辛い時こそ朗らかに。悲しい時こそ優しさを。
 四人は再び会うであろう。落ち葉が散り敷くこの山荘で。
 
 
 
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