あな 二篇/山人
つついているのでしょうか
*
夜のさなかというわけでもなく
朝のさなかというわけでもない
いつも中途半端な時間に覚醒するのだ
安い珈琲を胃に落とし込めば
やがて外界の黒はうすくなり
いくぶん白んでくる
陳腐な私という置物の胴体に
ぽっかりと誰かが開けた穴の中を
数えきれない叫びがこだまして
私の首をくるくる回す
この大きな空洞の中を
ときおり小鳥が囀り
名も無い花が咲くこともあった
今はこの空洞に何があるのだろう
暗黒は苔むして微細な菌類がはびこり
私のかすかな意思がこびりついているだけだ
また大きくせり出した極寒の風が
いそいそとやってくる
私とともにある
この
巨大な穴
外をみる
いくぶんかすかに白んできたようだ
空洞の上に厚手の上着を着込み
私は私に話しかけるために
外に出ようと思った
老いた犬を連れて
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