エトランゼ/やまうちあつし
 
遠くまでやって来た
この街に住み着いて
しばらく経つのに
こうして普通に暮らしているのに
いつまで異邦人なのだろう
思えば普通が一番遠い
わたしの笑いはだれかの笑いでは
どうもないらしい
だれかは家族の話で笑うが
わたしは風の香りで笑う
だれかは酒に酔うけれど
わたしは月夜の比喩に酔う
銀色の車が停めてあるところまで
猫を抱き歩いて行く
空には100年に1度の彗星
思えば地球が一番遠い
これから用事を済ませに行く
この星に住み着いて
しばらく経つのに
いつまで初心者なのだろう
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