生きた亡者/為平 澪
 

「世界には骨が似合う、」
と、いう、コトバを遺して。

詩人は墓を遺さない、墓というコトバを埋めていく。
詩人は世界を多く持つ、全部海に還すことも知って。
理屈だけが、まだ寄せて返して、浜に投げ出されている。



コトバはかき混ぜられた、シロップ、もう、透明ではない。
濁ったシナリオだけを、書き上げたノートの、かなしみ。
はじめは白かったものに、テーマを与えたら、「汚れた」、と
世界は嗤って、そして、つぶやいた。

私たちは、生きた亡者。
汚れたノートを海で洗濯して、溺れてしまう者、
私たちの撒いた骨はノートと世界を漂白する/漂泊する。

   (指切りは、裏切られる/寄せて返す、打ち寄せる、熱の波音。)

混濁した物語の果てに、手を振る最期の人よ、
私に、灯った、あなたの、声と炎、に、
どうか/憎しみのように消えない/名前を。

                 /、の、/愛する/「世界」に。}


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