夏夜の心臓/藤山 誠
 
しんしんに張った空気が
白い息を粉々に薄めていく
冷たくて暗い夜には
誰だって一人ぼっちになった気持ちだった筈だ

去年の冬を思い出そうとしても
上手く思い出せないでいる
額から汗を滴らせ
必死に思い出そうとする

こんな暑い夜には
何故だか女の匂いばかり思い出す
暗くて熱い心臓が
どこかで蠢いている

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