【プレ批評対象作品】あほん『釣り人』 について/田代深子
しているたちの悪さだ。それに自ら気づく。
2連目。
釣りする人が浮きに移相して、しかもそれは欲である。そこで女の長い髪が糸になりうる。
これは釣れるものではない
そもそも釣りではなくなってしまうのだ。これで一時的には、浮きは水面下に引きずり込まれる危険から救われるだろうが、むしろ水上につなぎ止める女が問題だ。気づいた途端に生々しさから逃れたくなっている。
しかし髪は潮に向かってのびおちつづけ、浮きは、まさに浮いている。水面にか、あるいは未だ着水することなく飛び続けているのか。浮きの向かうべきベクトルというのは決まっており、もちろん下へ向かう。浮きながら、女の髪を引き
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