嘘まんじゅう/藤鈴呼
淀みなく くるくると回る辛夷の葉が
余りにも大きくて 目を閉じたけれど
バララン バララン ば〜ら〜ら〜 と
黄色の房でも思い出しそうな 激しい音とともに
何処までも 追い駆けてくるから
存在感だけを 消せない
視界の隅に 何だか分からぬ 黒い物体を認め
認める迄もなく 目を逸らす 瞬間にも 似ている
二艇のボートが ゆっくりと進む
乗っているのは カナカナと 動かなくなりそうな
スズメバチ
きいろすずめばち とか そういう名前だったように
記憶しているが 定かではないから
ついでに 唇まで 閉じてしまおう
決断したからには リップクリームは ジャマ
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