父と娘/もっぷ
 
ミモザの美しいころに
父さんと手を繋いで
理由もしらず
バス停まで歩いたことは

憶えているわけもない
わたしは二歳

父さんの掌はきっと
わたしのちいさな手に
この世でほかにはみつけられない
ぴったりサイズのぬくもりだったはず

この二つのパズルのピースは だけど
この時が 永訣の春 と
なったかもしれなくて
二歳はどう思っていただろう
いつものように路傍の営みに気を取られ
ぬくもりの意味もしらずに
自分がにんげんだってこともしらずに
そして理由をまったくしらずに
しらないままに
バス停に着き
そこには父娘(おやこ)としての終着駅から終着駅への
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