魅力を伝える礼儀について/板谷みきょう
 
夜にギター片手に
ススキノの店で歌えるようになっても
唄だけでは食べて行けず
病院で働き続けていた

その年の秋に初めて
病院の慰安旅行に出席した

観光地を巡り
宿泊するホテルに到着
夜の宴会で宴は進んで行くが
飲めない下戸のボクにとっては
結構辛いものだった

カラオケなんてまだ無かったから
畳部屋の大広間では
各部署の余興があって
アルコールも大分進んでくうちに
社交ダンスに興じる者がちらほら

それに病院の職員というのは殆どが女性で
男性事務員はダンス相手に引っ張りだこ

特に三十代後半だった事務長は
殆どの女性職員とチークダンスを踊っていた
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