ワルツを聴きながら。/ヒヤシンス
 
ば町の佇まい。
 栄えた大通りに寂れた商店街。
 街路樹を照らす街灯や真夜中のイルミネーション。
 青春を謳歌する学生達と酔いどれ天使のサラリーマン。
 風俗店の看板やひそひそ話の客引き。
 ゴミ溜めに座り込む老人と彼を見下ろす警察官。
 ゴミを食らう野良犬と盛りの付いた猫の鳴き声。
 色や音や匂いが星空のもとで漂っている。
 暗闇に一人で過ごす者の苦悶の表情。
 何があったか歓喜の表情の者は誰?
 どこにいてもあらゆる表情が転がっている。
 
 それでは自分はどうだ。
 表情に溢れたこの世界の中で。
 朝は窓を開けた。
 夜は窓を閉めてしまった。
 私は無表情だっ
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