ワルツを聴きながら。/ヒヤシンス
 

 ワルツの流れる部屋の窓から遠く海を望む。
 海は二拍子だと昔から思っていた。
 先入観を捨てた時、私の世界は広がった。
 まだ見ぬ出来事や光景がこの世には美しく溢れている。



 例えばよく晴れた日の海だ。
 太陽を浴びた海は白く輝いている。
 喜びに溢れているようだ。
 そして曇りの日の海はグレーに沈んでいる。
 これほどの悲しみを見たことがない。
 海も空も風も漂う匂いでさえ、様々な表情を持っている。
 その表情を切り取る術を持っていない自分を悔んだ。
 見知らぬ画家や写真家を心の底から羨んだ。
 すべてはこんなにも表情を持っているのに。

 例えば町
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