真空海域、球体遭難/北街かな
 
いた
やがて夜がくる
心はすでに観測できずにいたが
光だけは感知し得た
その肉体が
全ての泡となって世界中の空を見あげて消えていった
空は大きくて
海は冷たく悪魔のようで
しあわせなことなど
いや
ただ、
しあわせがあることが理解できなかった

かつて海なんてどこにもなかったよ
岩なんかが喋るから
心なんてどうしてここにあったのだろうと人影は言った

かつて
共感はきみのとなりにあったが
孤独はきみの証明となり
灯台は
ずっときみのそばに建っていたよ
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