遠雷/うみこ
かった
曇りの日、
パレットの端に
洗い残した絵の具が、
薄くなって溜まっている
水と一緒に
一思いに溶けだした
淡い
色だった
筆で流す時、その指先があれていて
ピンクだ
と僕は思った
それで、
僕の夢は全部紫色になった
その日、美術で使った絵の具も
みんな紫色になった
プールサイドで
雨が跳ねている
君は帰り道
傘を使わなかった
僕は全部洗い流した
そして顔を上げると
雲の隙間から
陽の光が射す一瞬が見えた
とても一人では抱えきれない退屈を感じた初めての日だった
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